今月上旬の話で恐縮ですが、津軽半島の日本海側に植生調査に行きました。といっても正式なものでなく、林道沿いに高木、低木の樹種、特にクロモジの生育状況を調べました。

この時期、ノハナショウブが最盛期であることを思い出して、屏風山(びょうぶさん)から七里長浜へと足を伸ばしました。

屏風山とは岩木川の河口付近の幅5Km、長さ30Kmの砂丘地帯です。砂丘と砂丘の間は時に広く、時に狭い草原や湿原になってます。また、湿原には大小様々な沼があります。

特に、屏風山の中程にあるベンゼ湿原はニッコウキスゲが濃密に生えてて、6月中旬から下旬にかけて、見事に橙色に染まります。さらに、7月上旬には青紫色のノハナショウブに入れ替わります。

ニッコウキスゲやノハナショウブの花の時期は原生花園という言葉があてはまるような景観です。

2014_07282010-9-40010
 涼しげな印象を与えるノハナショウブの群生

2014_07282010-9-40035

ベンゼ湿原から日本海まで歩いて10分位で着きます。
途中、砂丘地帯にはカシワの自然林(純林)が見られます。季節風のため樹高は低く、枝も曲がってます。

2014_07282010-9-40011
カシワの自然林(純林)、冬でも枯葉が木についているので区別できます。

途中からクロマツ林に変わりました。よく見れば、等間隔に生えてることから人工林だとわかります。

2014_07282010-9-40014
クロマツの人工林

これが浜辺まで続いてます。浜辺付近ではハイマツのようになってて、枯木が目立ちます。
「白砂に松の緑」の景観を期待して植栽したのでしょうか。植栽前は海岸近くまでカシワの自然林で覆われていたと思われます。

2014_07282010-9-40022
海岸近くのクロマツ林。枯れ木が目立ちます。

そして、日本海に出ます。

2014_07282010-9-40021

さて、最後のハイライトは埋没林です。海岸は砂丘がえぐられてかなりの高さに切り立っています。その断面が泥炭層の露頭になってます。泥炭層から埋木が露出してます。

C14の測定結果から露出している最下層は3万7千年前だそうです。また、花粉などの分析の結果から、5千4百~9千2百年前の間、海中にあったようです。この海侵時代を境にして植生がかわり、エゾマツ、トドマツ林からブナ、カシワ林になったそうです。

2014_07282010-9-40016
砂丘がえぐられ切り立った泥炭層の断崖が続く。露出している埋木はエゾマツのようです。。

余談ですが、8月1日号の『広報 あおもり』に植物観察トレッキングツアー「日本海出来島海岸の最終氷期埋没林・ベンゼ湿原ー約2万8千年前の埋没林とベンゼ湿原の植物観察」というのが載ってました。
この記事に触発されて、少し前の話ですが紹介しました。


参考文献  石川茂雄著 「ふるさとの四季」 津軽書房 (1979)